盗聴 二・二六事件
昭和を揺るがした二・二六事件のさなか、決起した青年将校たちや首謀者と疑われた北一輝らの電話交信が何者かによって盗聴・録音されていたという。その20枚の録音盤を発見して以来、30年の長きに渡って事件の真相を探るべき調査取材を重ねた元NHKプロデューサーによる渾身のノンフィクション。NHK「戒厳司令『交信ヲ傍受セヨ』〜二・二六事件秘録」として放送された番組の内容に、その後、明らかになった新事実なども書き加えられた力作である。軍部の無責任、ご都合主義により公正な法の裁きを受けることなく、事実を封印したまま事件が闇に葬られてしまったことは明らかだ。その後の軍部の暴走、日中戦争、太平洋戦争へと突き進んでいく歴史の流れはまさにこの事件の結末によるところが大きい。決起した青年将校らは、確かに武力に訴えた方法論は間違っていたが、国を憂い昭和維新を目指したその志は間違っていなかったのではないか? 結局のところ二・二六事件とは、僕にとって憂国であり、三島由紀夫に繋がってしまうのだ。昭和45年11月25日、三島が自衛隊市ヶ谷駐屯地にて割腹自殺をとげたあの三島事件。盾の会が目指していたもの、それはまさに二・二六事件で青年将校らが成し得なかった昭和維新そのものだと思うから。
<「盗聴 二・二六事件」 中田整一著 文春文庫>